海外取引所を使った場合の仮想通貨申告方法|為替換算と証憑整理の完全ガイド

海外取引所を使った仮想通貨の申告方法を解説するアイキャッチ。為替換算、取引履歴、証憑整理を示すイラストと、日本語タイトル「海外取引所を使った場合の申告方法|為替換算と証憑の集め方」入り。
目次

海外取引所を利用した利益も日本で課税される

近年、Binance・Bybit・MEXCなどの海外取引所を使って仮想通貨を売買する人が増えています。
手数料が安く、取扱通貨が多いことが魅力ですが、税金の申告は自己責任です。

日本の税法では、海外取引所を利用して得た利益も、日本居住者であればすべて課税対象になります。
つまり、国内取引所だけでなく、海外口座での取引利益も日本の確定申告に含める必要があります。

ただし、海外取引所には日本円の取引記録がないため、為替換算・証憑整理・税務対応が難しくなりがちです。
この記事では、実際に海外取引所を使った場合の申告方法を、
初心者でも理解できるように具体的なステップで解説します。


海外取引所の利益も申告が必要な理由

日本では「全世界所得課税」の原則がある

日本の税法では、居住者に対して「全世界所得課税」の原則が適用されます。
つまり、日本国内だけでなく海外で得た所得もすべて日本で申告・課税されます。

区分内容
対象者日本に住所または1年以上の居所がある人
対象範囲国内・海外を問わず全ての所得
根拠法令所得税法第7条「居住者の所得の範囲」

そのため、たとえBinanceやBybitなどの海外取引所を使っていたとしても、
日本円に換金していなくても課税対象となるケースがあります。


海外取引所の課税対象となる取引例

仮想通貨の課税は「売却」や「交換」で所得が確定するため、
以下のような取引が対象となります。

取引内容課税の有無課税区分
BTC→USDTに交換課税対象雑所得
NFT購入に仮想通貨を使用課税対象雑所得
ステーキング・レンディング報酬受取課税対象雑所得
現物保有(売買なし)非課税該当なし

つまり、仮想通貨同士の交換でも課税される点が大きな注意点です。


海外取引所で申告が難しい3つの理由

① 為替換算が必要になる

海外取引所ではすべての取引が「USDT」や「BTC」などの暗号資産建てで行われ、日本円ベースの記録がありません。
そのため、確定申告時には取引ごとに日本円へ換算し直す必要があります。


② 年間取引報告書が発行されない

国内取引所(bitFlyerやCoincheckなど)は年間取引報告書を発行しますが、
海外取引所にはその制度がありません。
つまり、自分で取引履歴をダウンロードして整理しなければなりません。


③ 税務署が参照できる証憑が少ない

海外取引所は日本の税務当局に取引データを提出していないため、
税務署が自動で把握できません。
その分、自分で証拠を残しておくことが重要になります。


申告に必要な書類とデータ一覧

海外取引所の取引を申告するには、次のような資料を準備しておく必要があります。

資料の種類取得方法使用目的
取引履歴(CSV形式)取引所の「Export」機能損益計算・証拠資料
残高証明スクリーンショット・エクスポート年末時点の保有確認
為替レート証明CoinGecko・為替データサイト円換算の根拠
ウォレットアドレス履歴ブロックチェーンエクスプローラー送金・受取証明
ガス代履歴MetaMaskなどのTx履歴経費証明

これらを組み合わせて「いつ・どの通貨を・いくらで取引したか」を明確にすることで、
税務署に説明できる状態を整えます。


為替換算のルールを理解する

換算の基本は「取引日のレート」

海外取引所の取引はドルやUSDTで行われますが、日本の税法上はすべて日本円で申告します。
そのため、取引が成立した日の為替レートを使って換算する必要があります。

換算対象換算レート参考元
売却日取引日のドル円レート三菱UFJ銀行・外為どっとコムなど
受取日受取時点のレートCoinGecko等
年末残高12月31日時点のレート日本銀行公表レート

為替レートの取得方法

実務上は、以下のような方法でレートを記録しておくと安全です。

  1. ドル建て取引の換算
    • 取引日時点のドル円レートを使用
    • 出典を明示(例:三菱UFJ銀行 2025/02/15のTTM=145.20円)
  2. USDT建て取引
    • 1USDT=1USDとして同日の為替レートを適用
  3. BTC・ETH建て取引
    • CoinGeckoなどで取引時点の円建て価格を取得

換算の具体例

内容数値例
取引BinanceでBTC→USDTへスワップ
取引日時2025年1月10日 12:00
BTC価格1BTC=7,000,000円
交換額0.1BTC→700,000円相当
為替レート1USD=145円
円換算額700,000円(換算済)

このように、取引日時点の円換算額を明確に記録しておくことが、正確な申告の基本です。


海外取引所での損益計算の考え方

取引履歴を整理する

海外取引所のCSVデータをダウンロードし、次のような項目を整理します。

項目内容
取引日実際のトランザクション発生日
通貨ペアBTC/USDT、ETH/BUSDなど
取引数量売却・購入数量
単価取引時のレート
手数料取引手数料(USDTなど)
円換算額日本円ベースの金額

これをGoogleスプレッドシートやExcelでまとめ、年間の総所得金額を算出します。


損益計算の方法(総平均法・移動平均法)

仮想通貨の原価計算には、「総平均法」または「移動平均法」を使用します。

区分計算方法特徴
総平均法年間の取得単価の平均で計算シンプルで確定申告向き
移動平均法取得のたびに単価を更新精密だが手間が多い

確定申告書でどちらを採用してもよいですが、毎年同じ方法を継続して使う必要があります。


損益計算ツールの活用

海外取引所の履歴をそのまま手計算するのは現実的ではありません。
以下のようなツールを使えば、自動で円換算・損益計算まで行えます。

ツール名特徴
Gtax日本税制準拠、海外取引所にも対応
CryptactBinance・Bybitなど主要取引所に対応
CoinTracking海外ユーザー向け高機能版、詳細分析可

これらのツールを使うことで、為替換算・損益通算・CSV出力まで自動化できます。

海外取引所を利用した場合の確定申告手順

ステップ①:損益を集計する

海外取引所の取引履歴をすべて日本円換算し、年間の損益を算出します。
損益計算ツールを使う場合でも、為替レートや換算根拠を記録しておくことが重要です。

手順内容注意点
1CSVデータを取得(取引履歴)日時・数量・手数料を確認
2為替換算(円ベース)取引時レートを使用
3損益集計取引ごとの利益・損失を合計
4総所得額を算出雑所得欄に記載

ステップ②:確定申告書に入力する

仮想通貨の所得は雑所得として申告します。
確定申告書Bの「雑所得(その他)」欄に以下のように記入します。

項目記載内容例
種目海外取引所による仮想通貨取引
収入金額年間の売却・交換による円換算額
必要経費手数料・ガス代・ツール利用料など
所得金額収入 − 経費

雑所得は給与所得などと合算して課税されます。
税率は所得に応じて5〜45%の累進課税です。


ステップ③:添付書類を整理して保存

税務署は海外取引所の情報を直接取得できないため、
自分で証拠資料を整えることが非常に大切です。

書類内容保存方法
取引履歴CSV売買・スワップ・送金の履歴クラウドに保存
為替換算根拠レート出典(例:MUFG TTM)Excel・PDF化
取引所スクリーンショット残高・履歴ページの保存年末時点で撮影
ウォレット履歴MetaMask・Ledger等のTxID一覧CSV出力
計算レポートGtax・Cryptactの出力ファイル申告書に添付可

これらの資料を**「いつでも提出できる状態」で1〜7年間保存**しておくのが理想です。


為替換算に関するよくある疑問

Q1. どの為替レートを使えばいい?

原則として、取引成立日のTTS/TTM(仲値)レートを使います。
毎日取引がある場合は平均値を使うより、日別換算のほうが正確です。
レートの出典を明記することで、税務署にも納得してもらえます。


Q2. USDTやUSDCなどのステーブルコインはどう扱う?

1USDT≒1USDとして扱い、取引日のドル円レートで円換算します。
ただし、一部ステーブルコイン(例:USTなど)に乖離がある場合は、実勢価格を使用します。


Q3. 為替差益が出た場合も課税される?

はい。USDT→JPYの換金などで為替差益が出た場合も課税対象です。
仮想通貨の売却益と同様に「雑所得」に含めて申告します。


証憑の集め方と保存方法

海外取引所ごとのデータ入手方法

取引所ダウンロード方法備考
Binance[取引履歴]→[エクスポート]→期間指定最大3カ月ごと
Bybit[取引履歴]→[エクスポートCSV]一括出力可
MEXC[注文履歴]→[Download CSV]期間制限あり
OKX[Assets]→[History]→[Export]日時・手数料含む
KuCoin[Order History]→[Export Data]API接続も可

証拠として有効な保存形式

  • CSVファイル(公式出力)
  • スクリーンショット(タイムスタンプ付き)
  • PDF出力(取引所ページの保存)
  • TxID(ブロックチェーン上のトランザクション番号)

取引所・ウォレット・換算根拠を紐づけて保存しておくことで、後の税務確認もスムーズになります。


税務署からの質問に備えるポイント

海外取引所の申告漏れが増えているため、税務署は暗号資産関連の調査を強化しています。
実際に指摘されやすいポイントは次の3つです。

チェック項目よくあるミス対応策
為替換算平均値で計算している日別レートを使用
証拠書類履歴やレート根拠がないPDF保存・クラウド管理
売却損益仮想通貨同士の交換を非課税扱い交換時も課税と認識する

税務調査では、「どうやって計算したのか」を説明できるかがポイントになります。
自動計算ツールを使う場合も、元データを出せる状態にしておきましょう。


海外取引所の税務リスクと注意点

① 取引所閉鎖・破産によるデータ消失

海外取引所は日本の金融庁の監督下にないため、突然閉鎖することもあります。
過去にはFTXのようにデータアクセスが遮断された事例もあります。
取引履歴は定期的にバックアップするのが必須です。


② 海外送金・入出金の把握ミス

海外口座から日本円を出し入れする際には、銀行側で記録が残ります。
税務署は銀行データも参照できるため、入金・出金の根拠を明確に説明できるようにしておきましょう。


③ 海外DeFi利用も課税対象

Binance LaunchpoolやPancakeSwapなど、海外DeFiサービスを介したステーキング・ファーミング報酬も課税対象です。
海外取引所経由で得たDeFi報酬も、雑所得としてまとめて申告します。


節税につながる実務ポイント

経費を正しく計上する

海外取引所でも、仮想通貨取引に必要な経費は控除可能です。

経費の種類内容例
取引手数料海外取引所のスワップ・トレード手数料
ガス代DeFi操作や送金にかかったETHなど
損益計算ツール費用Gtax・Cryptactなどの課金料
通信費ネット回線・VPN費用
セミナー費・書籍費税務・投資関連の情報収集

長期的な節税策:青色申告

仮想通貨取引を継続的に行っている人は、青色申告承認申請書を提出しておくと節税効果があります。

特典内容
特別控除最大65万円の所得控除
損失繰越赤字を3年間繰越可能
家族への報酬経費計上可能(事業的取引の場合)

副業レベルでも、年間100万円以上の利益があるなら青色申告を検討する価値があります。


実務チェックリスト:海外取引所申告前に確認!

✅ 取引履歴(CSV)をすべてダウンロード済み
✅ 為替レートを日別で換算し、出典を記録
✅ 円換算した損益表を作成済み
✅ 必要経費(手数料・ガス代)を控除
✅ 証拠書類をPDFまたはスクリーンショットで保存
✅ 確定申告書Bの雑所得欄に記載
✅ e-Taxで電子申告または紙提出準備

これらを順に実行すれば、海外取引所の取引も正確に申告できます。


まとめ|海外取引所の取引も日本でしっかり申告を

海外取引所で得た利益も、日本の居住者であれば課税対象です。

  • 為替換算は「取引日レート」を使用
  • 証拠書類を定期的にダウンロードして保存
  • 損益計算ツールで自動化も活用
  • 青色申告で節税効果を最大化

海外取引所を利用していても、
正確な換算・証拠の整備・継続的な記録さえ行えば、安心して申告が可能です。
税務リスクを回避し、透明性のある投資を続けましょう。

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