仮想通貨を“寝かせて増やす”時代に
ビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨を保有している法人にとって、
ただ値上がりを待つだけでなく、**「運用して増やす」**という選択肢が注目されています。
その中でも人気なのが、
- ステーキング(Staking):保有通貨をブロックチェーン運営に参加させ、報酬を得る仕組み
- レンディング(Lending):保有通貨を貸し出し、利息を得る仕組み
です。
個人投資家ではすでに一般的になりつつありますが、
法人として仮想通貨を保有する企業や個人事業主も増える中で、
「法人でも使える取引所やサービスはどれか?」
「税務上の扱いやリスクはどうなるのか?」
といった疑問が多く寄せられています。
この記事では、主要国内取引所・サービスの法人口座対応状況を比較し、
法人が安全に活用できるステーキング・レンディングの選び方を解説します。
法人でステーキングやレンディングを利用する際の課題
法人が仮想通貨運用を行う場合、個人とは違う制約や注意点があります。
以下のような要素を理解しておくことが重要です。
1. 法人口座での利用可否が異なる
取引所によっては、法人口座ではステーキングやレンディングが利用できないケースがあります。
たとえば、個人向けには積極的にステーキングを提供している取引所でも、
法人では「非対応」「一部通貨のみ」と制限がかかることが多いのです。
2. 契約形態や貸出条件が異なる
法人がレンディングを行う場合、貸付契約書の締結が必要になる場合があります。
また、法人ではコンプライアンス上の審査が個人より厳しい傾向があり、
実際の運用までに数日〜数週間を要することもあります。
3. 会計・税務処理の難しさ
ステーキング報酬やレンディング利息は、法人では営業外収益や雑収入として計上します。
ただし、受け取った仮想通貨の時価評価や、報酬発生時点での換算が必要になるため、
実務的な会計処理が煩雑になりがちです。
4. セキュリティとリスク管理の必要性
法人の場合、資産運用=会社財産の管理となるため、
万が一のハッキングや取引所トラブルは信用問題にも直結します。
ステーキングやレンディングに参加する際には、
「カストディ体制(預かりの安全性)」や「損失補填の有無」も必ず確認すべきポイントです。
法人口座で利用できるステーキング/レンディング比較一覧
まずは、国内主要取引所・サービスの対応状況をまとめました。
| 取引所/サービス名 | ステーキング対応 | レンディング対応 | 法人口座利用 | 対応通貨数 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|---|
| GMOコイン | 〇(ADA, DOTなど) | 〇(貸暗号資産) | 〇 | 約10通貨 | 国内最大級。法人もフル対応。 |
| bitFlyer | △(ETHのみ) | × | 〇 | 1通貨 | ステーキングβ版。機能限定。 |
| Coincheck | 〇(LSKなど) | 〇(貸仮想通貨サービス) | ×(法人不可) | 約5通貨 | 個人限定サービス。法人利用NG。 |
| SBIVCトレード | × | × | 〇 | ー | 法人対応だが運用系サービスなし。 |
| Bitbank | × | 〇(貸暗号資産) | 〇 | 約5通貨 | レンディングのみ法人可。 |
| HashHubレンディング | × | 〇(BTC, ETH, USDCなど) | 〇 | 約10通貨 | 専門レンディング業者。契約型で高利回り。 |
💡 まとめポイント
- 「GMOコイン」と「Bitbank」「HashHubレンディング」が法人対応で実用的。
- 個人では使えるが法人NGのケースも多い(Coincheckなど)。
- 金融庁登録業者の中で、GMOコインが最もバランスが良い。
法人利用におすすめの取引所・サービス
上記を踏まえて、信頼性・コスト・利回りのバランスから特に注目すべき3社を紹介します。
GMOコイン:ステーキングもレンディングも法人対応
GMOコインは、国内で最も包括的に仮想通貨運用ができる取引所です。
✅ 特徴
- ステーキングとレンディング両方に対応
- 法人口座でも同等のサービス利用可
- 金融庁登録済み+GMOグループの信頼性
- 手数料無料・自動報酬反映
特にステーキングでは、Cardano(ADA)・Polkadot(DOT)などの人気銘柄をサポート。
報酬は自動的にアカウントに付与されるため、放置運用が可能です。
📊 参考利回り(目安)
| 通貨 | 年率(APY) | 最小保有数量 |
|---|---|---|
| ADA | 約2〜4% | 1 ADA〜 |
| DOT | 約5〜7% | 1 DOT〜 |
レンディングも「貸暗号資産 by GMOコイン」として提供され、
1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月などの期間を選択できます。
💡 ポイント:
- 法人のKYC・書類審査に対応
- 会計上の報酬履歴もダウンロード可能
- 安定運用を目指す法人に最適
Bitbank:レンディング専門として堅実
Bitbankは、法人向けの「貸暗号資産サービス」を提供しており、
ステーキングは非対応ながら、レンディングの利便性に優れています。
✅ 特徴
- 金融庁登録済み取引所
- 1〜3ヶ月単位での貸出期間設定
- 主要通貨(BTC, ETH, XRPなど)に対応
- 契約内容が明確で法人利用がしやすい
📊 参考利率(目安)
| 通貨 | 年率(APY) |
|---|---|
| BTC | 1〜3% |
| ETH | 2〜4% |
| XRP | 2〜5% |
💡 ポイント:
- 契約型のため法人口座で正式利用可能
- 安全性・コンプライアンスが高く、信頼性重視の法人に向く
HashHubレンディング:高利回りの法人対応サービス
HashHubは、国内では珍しい「レンディング専業事業者」であり、
個人・法人の双方に柔軟なプランを提供しています。
✅ 特徴
- 法人契約に正式対応
- BTC・ETH・USDCなどメジャー通貨をカバー
- 最短1ヶ月から貸出可能
- 利回りが高く(最大6〜10%)、報酬通貨選択も可能
📊 参考利回り(目安)
| 通貨 | 年率(APY) | 備考 |
|---|---|---|
| BTC | 約3〜5% | 市場連動型 |
| ETH | 約4〜6% | 自動再投資可 |
| USDC | 約8〜10% | ステーブルコインで高利率 |
💡 ポイント:
- 契約型のため法人契約書を締結
- 安全性+高収益を両立したい法人に最適
- カストディ体制が整備されており、セキュリティリスクが低い
法人口座でステーキング/レンディングを活用する意義
個人投資家に比べて、法人が仮想通貨を運用する際には明確な目的と会計的な裏付けが求められます。
単なる投機ではなく、「企業の余剰資金運用」や「デジタル資産の有効活用」としての意味を整理しておきましょう。
1. 資金効率の向上
企業が保有する仮想通貨を遊ばせずに利回りを生み出せる点が最大のメリットです。
たとえば、決済や取引で受け取ったBTCをただウォレットに保管しているだけでは、資産は増えません。
しかし、ステーキングやレンディングを活用すれば、
平均年利2〜10%のリターンを得られる可能性があります。
| 運用方法 | 年利(目安) | 特徴 |
|---|---|---|
| ステーキング | 2〜6% | 通貨ネットワークに貢献して報酬獲得 |
| レンディング | 3〜10% | 通貨を貸し出して利息を得る |
💡 ポイント:
銀行預金の利率が0.001%未満の現状では、
仮想通貨運用は**「企業の新しい資産運用手段」**として注目されています。
2. 長期保有資産の価値向上
仮想通貨を長期保有している企業にとっても、
ステーキングやレンディングは「保有のインセンティブ」を高める仕組みです。
例として、Cardano(ADA)やPolkadot(DOT)などはステーキング報酬が高く、
保有しているだけで定期的なインカムゲインを得られます。
このような「保有資産が自動的に増える」構造は、
企業の財務健全性にもプラスに働く場合があります。
3. Web3事業・FinTech関連企業との親和性
Web3やブロックチェーン関連の法人にとって、
ステーキングは単なる投資ではなく、ネットワーク貢献活動という位置づけにもなります。
たとえば、PoS(プルーフ・オブ・ステーク)型ブロックチェーンでは、
ステーキング参加によってバリデーター報酬が得られ、
ネットワークの安定化にも寄与します。
これは単なる利回り獲得ではなく、
「自社の業界内ポジションを高める」効果も期待できます。
ステーキングとレンディングの違いを整理
両者は混同されやすいですが、仕組みとリスク構造が異なります。
以下の表で簡単に比較してみましょう。
| 比較項目 | ステーキング | レンディング |
|---|---|---|
| 仕組み | 通貨をネットワークに預け、運営に参加して報酬を得る | 通貨を他者に貸し出して利息を得る |
| 主な対象通貨 | ADA, DOT, ETHなど(PoS型通貨) | BTC, ETH, USDCなど(多通貨対応) |
| 利回り | 2〜6%前後 | 3〜10%前後 |
| リスク | ブロックチェーン障害やスラッシング(罰則) | 貸出先の信用リスク |
| 拘束期間 | 数日〜数週間 | 契約期間に応じて1〜6ヶ月 |
| 税務処理 | 報酬発生時点で収益計上 | 利息受領時に収益計上 |
💡 まとめ:
- 安定性重視 → ステーキング
- 高利回り狙い → レンディング
法人の場合、資産運用目的ならレンディング、事業協賛的ならステーキングと使い分けるのが理想です。
法人での税務処理・会計上の考え方
仮想通貨運用を法人が行う場合、税務・会計の処理ルールを明確にしておくことが重要です。
1. ステーキング報酬の計上方法
ステーキング報酬は、報酬が確定した時点で雑収入として計上します。
会計上は「営業外収益」または「仮想通貨評価益」として処理するケースが一般的です。
仕訳例
(借)仮想通貨 XXX円
(貸)雑収入 XXX円
報酬受取時点のレートで円換算し、会計帳簿に反映します。
2. レンディング報酬の計上方法
レンディング報酬(利息)は、契約終了時に受け取った時点で収益計上します。
ステーキングと異なり、契約に基づく受取日で計上される点に注意が必要です。
仕訳例
(借)仮想通貨 XXX円
(貸)受取利息 XXX円
3. 評価替えと期末処理
期末時点で保有する仮想通貨は、取得価額または時価のいずれか低い方で評価します(低価法)。
評価損が生じた場合は、損金算入が可能です。
ただし、ステーキングやレンディング中の通貨は、拘束資産として別勘定に分けて管理するのが望ましいです。
法人が注意すべきリスクと対策
ステーキングやレンディングは魅力的な仕組みですが、
法人が行う際には「リスクマネジメント」が不可欠です。
1. 貸出先リスク(信用リスク)
レンディングでは、通貨を貸し出す相手が破綻・倒産した場合、元本が返ってこないリスクがあります。
このため、**金融庁登録業者(例:GMOコイン・Bitbank)**を利用するのが原則です。
2. カストディ(保管)リスク
ステーキング・レンディング中の通貨は、取引所や事業者が保管します。
この保管体制(カストディ)が脆弱だと、ハッキングや紛失リスクが高まります。
対策としては、
- コールドウォレット管理が明記されている業者を選ぶ
- 取引所の「暗号資産保険」加入状況を確認
などが有効です。
3. 税務監査・内部統制リスク
法人が暗号資産を運用する場合、監査法人や税務署からの説明要求が増えます。
取引履歴・報酬履歴を明確に記録しておくことが、リスク回避の第一歩です。
💡 対策例:
- GMOコインやBitbankの「取引明細ダウンロード機能」を活用
- 仕訳自動化ツール(freee、マネーフォワードクラウド)を連携
- 月次で仮想通貨残高を棚卸し
実際の法人活用事例
ここでは、ステーキング・レンディングを活用している日本国内法人の事例を紹介します。
事例①:Web3系スタートアップ企業
ブロックチェーン開発を行うスタートアップでは、
自社保有のADA・ETHをGMOコインでステーキングし、運用報酬を得ています。
結果
- 月平均報酬:保有額の約0.3〜0.5%
- 手数料:無料
- 運用目的:技術参加+安定運用
「開発資金の補助+技術理解促進」という2つの効果を得ており、
事業面・財務面の両方でメリットを実感しています。
事例②:資産管理法人
不動産や株式に加え、仮想通貨を分散保有する資産管理会社が、
Bitbankのレンディングを活用。
結果
- 運用通貨:BTC・ETH
- 年利:平均3.5%
- 運用期間:6ヶ月単位
- 利益:安定的なインカム収益を実現
同社では、レンディング収益を雑収入として計上し、
法人税を考慮しつつ運用上のキャッシュフロー改善に成功しています。
法人口座でステーキング/レンディングを始める手順
「法人でも使える」とわかっても、実際の手続きや設定は少し複雑です。
ここでは、主要取引所を例にした流れを具体的に見ていきましょう。
1. 法人口座を開設する
まずはステーキングやレンディングに対応している取引所で、法人口座を開設します。
✅ 必要書類の一例
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 登記事項証明書 | 発行から3か月以内のもの |
| 定款 | PDFまたはスキャンで提出 |
| 代表者本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカードなど |
| 取引担当者の本人確認書類 | 実際の操作担当者用 |
| 法人番号・所在地確認書類 | 登記簿や公共料金領収書など |
💡 ポイント:
GMOコインやBitbankではオンライン完結可能。郵送不要で最短1〜3営業日で開設できます。
2. ステーキング・レンディングの対象通貨を選ぶ
法人で利用できる通貨は個人より少ない場合があります。
一般的に以下の通貨が対象です。
| 区分 | 主な通貨 | 特徴 |
|---|---|---|
| ステーキング対応 | ADA, DOT, ETH | PoS型ブロックチェーン通貨 |
| レンディング対応 | BTC, ETH, XRP, USDC | 安定利回りを狙いやすい |
複数通貨に分散投資することで、価格変動リスクを抑えつつ安定収益を狙えます。
3. ステーキングを設定する
例として、GMOコインの法人口座でのステーキング手順は次の通りです。
GMOコインでの流れ
- ログイン後、「ステーキング」を選択
- 対象通貨(ADAやDOTなど)を選ぶ
- 参加数量を指定して申込
- 自動的にステーキング開始
- 報酬は定期的に口座へ反映
ステーキング期間中でも通貨の売却や送金が可能な場合があり、
「流動性を保ちながら運用できる点」が大きなメリットです。
4. レンディングを申し込む
BitbankやHashHubでは、レンディング(貸暗号資産)を契約形式で行います。
手続きの一般的な流れ
- サービス画面から「貸暗号資産を申し込む」を選択
- 貸出通貨・数量・期間(1ヶ月〜6ヶ月)を指定
- 申込完了後、審査・契約書締結
- 貸出期間終了後、元本+報酬を受取
💡 注意点:
- 途中解約ができない場合が多い
- 貸出期間中の価格変動リスクは自己負担
- 利回りは市場状況により変動
5. 取引履歴と報酬明細を保存
法人運用では、すべての取引履歴を証憑として保管する必要があります。
取引所の「ダウンロード機能」から、以下の書類を定期的に保存しましょう。
- ステーキング報酬履歴(通貨別)
- レンディング契約履歴
- 受取利息・満期報酬一覧
- 評価損益レポート
これらをfreee・マネーフォワードクラウドと連携して自動仕訳すると、
決算時の会計処理が格段にスムーズになります。
法人が失敗しやすい落とし穴と対策
ステーキング・レンディングは便利な一方で、
法人運用では「やり方を間違えると損をする」ケースもあります。
❌ よくある失敗例と ✅ 対策
| よくある失敗 | 対策 |
|---|---|
| 個人口座で法人資金を運用してしまう | 法人口座で明確に分けて管理する |
| 報酬を受け取っても帳簿に反映していない | 毎月の取引履歴をダウンロードして記帳 |
| 税務署への説明資料を用意していない | 取引明細+契約書を保存(PDF推奨) |
| ステーキング中に資産を全額売却 | 拘束解除のタイミングを確認してから操作 |
| 高利回りを優先して無登録業者を利用 | 金融庁登録済み業者を必ず利用する |
法人向けおすすめ組み合わせ例
どのサービスをどう組み合わせるかで、安定性とリターンは大きく変わります。
目的別に3つのモデルケースを紹介します。
パターン①:安定運用重視(堅実型)
| サービス | 内容 |
|---|---|
| GMOコイン | ADAステーキング(2〜4%) |
| Bitbank | BTCレンディング(1〜3%) |
| 管理方法 | 取引明細を月次で保存・freee連携 |
👉 安定性・安全性を重視する企業向け。
銀行感覚で始められ、会計処理も容易。
パターン②:高利回り重視(積極型)
| サービス | 内容 |
|---|---|
| HashHubレンディング | USDC・ETH貸出(6〜10%) |
| GMOコイン | DOTステーキング(5〜7%) |
| 管理方法 | リスク分散・契約書保存必須 |
👉 資金効率を最大化したい中小企業・投資法人向け。
パターン③:技術貢献型(Web3関連企業)
| サービス | 内容 |
|---|---|
| GMOコイン | ADA・DOTステーキング |
| 独自ノード運用 | ETH自己ステーキング |
| 管理方法 | 報酬は事業収益として会計処理 |
👉 自社技術と連携したブロックチェーン事業運営を狙うスタートアップ向け。
ステーキング/レンディングを導入する際の行動ステップ
最後に、法人が実際に動き出す際の「チェックリスト」をまとめます。
✅ 失敗しないための5ステップ
- 金融庁登録業者かどうかを確認する
- 法人口座開設に必要な書類を準備
- ステーキング・レンディング対象通貨を選ぶ
- 取引履歴・報酬明細を月次で保存
- 税理士・会計担当者と会計処理を共有
✅ 導入後の運用ルール例
- 報酬付与日を会計月次処理に組み込む
- 貸出先リスクを3ヶ月ごとにチェック
- 取引所の規約変更がないか定期的に確認
まとめ:法人でも“安全に増やせる時代”へ
これまで仮想通貨のステーキングやレンディングは、
「個人投資家の特権」のように思われていました。
しかし現在は、GMOコイン・Bitbank・HashHubなどを中心に、
法人でも正式に参加できる仕組みが整っています。
- ステーキングは「ネットワークに貢献して報酬を得る」
- レンディングは「資産を貸して利息を得る」
という2つの手法を組み合わせることで、
企業は仮想通貨を「眠らせずに増やす」ことが可能になります。
リスクを理解し、正しい手順で管理すれば、
法人運用でも安定したインカムゲインを実現できるでしょう。

