会社で保有する暗号資産の会計処理|時価評価・仕訳・開示を徹底解説

会社で保有する暗号資産の会計処理をテーマにしたビジネス風イラスト。ノートパソコン、ビットコインのコイン、帳簿、電卓が並び、時価評価と開示をイメージ。
目次

暗号資産を会社で保有するケースが増えている理由

ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの暗号資産(仮想通貨)は、もはや個人投資家だけでなく、法人でも保有・運用するケースが増えています。
背景には以下のような要因があります。

  • 決済・送金手段としての利用拡大
  • 余剰資金の運用先としての注目
  • Web3・ブロックチェーン関連事業との関係強化
  • 海外子会社・投資先との取引での利用増加

しかし、会社として暗号資産を保有する場合、会計処理のルールや税務上の扱いが複雑になります。
特に「時価評価」「損益計上」「開示の方法」については、個人の確定申告とは異なる論点が多く、誤ると決算に大きな影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、会社(法人)が暗号資産を保有する場合の会計処理・時価評価・開示上のポイントをわかりやすく解説します。


法人が暗号資産を保有する際に押さえるべき前提

まず、会社で暗号資産を保有する場合の前提として、次の3点を理解しておくことが重要です。

項目内容
会計基準日本では企業会計基準第38号「暗号資産に関する会計処理」が適用される
税務取扱い法人税基本通達等に基づき、期末評価損益の計上が必要
保有目的決済用・投資用・事業用によって勘定科目・処理方法が変わる

暗号資産は、現金や預金のように「法定通貨」ではありません。そのため、無形資産としての性質を持ちながらも、短期的な価格変動リスクを反映させるために時価評価が求められる点が大きな特徴です。


法人における暗号資産の分類と勘定科目

暗号資産を会計上どのように分類するかは、保有目的によって異なります

保有目的主な勘定科目処理の特徴
決済目的(取引先への支払い・受取)仮想通貨預り金、仮想通貨受入金など取引時点の時価で円換算して処理
投資目的(値上がり益の狙い)暗号資産、有価証券的性質期末時価評価を行い、損益を計上
事業目的(取引所・マイニング・Web3事業)在庫資産またはその他資産棚卸資産として扱うこともあり

勘定科目の例

  • 「暗号資産」:投資用として保有する場合
  • 「仮想通貨受入金」:顧客からの入金を一時的に保持する場合
  • 「暗号資産評価損益」:期末評価での差額を処理する場合

会計処理の基本ルール:取得時と期末評価の考え方

暗号資産を購入・受領した際、および決算時にはそれぞれ異なる処理が必要です。

1. 取得時の処理

取得時は**取得時点の時価(円換算額)**で計上します。

例:1BTCを800万円で購入した場合
→「暗号資産(資産)800万円/現金預金800万円」

購入手数料がある場合は、取得原価に含めて処理します。

2. 期末時価評価

決算日時点で保有している暗号資産については、時価評価を行い、評価損益を計上します。

  • 時価が上昇している場合 → 評価益を「暗号資産評価益」として計上
  • 時価が下落している場合 → 評価損を「暗号資産評価損」として計上

例:期末時点で1BTCの時価が900万円に上昇した場合
→「暗号資産800万円/暗号資産評価益100万円」
→「暗号資産900万円」

なお、評価益・損は損益計算書(PL)に反映されるため、法人税計算にも影響します。


税務上の取扱い:評価損益は課税対象になる

税務上も、期末の時価評価に基づいて損益を認識することが求められます。
つまり、未実現の評価益も課税対象となる点がポイントです。

評価益が出た場合

益金算入(課税対象)
帳簿上の評価益は、法人税の計算上も益金として扱われます。

評価損が出た場合

損金算入(税務上も認められる)

区分会計上の処理税務上の扱い
評価益評価益を計上益金算入
評価損評価損を計上損金算入

このため、暗号資産の価格変動が大きい場合には、期末の評価で利益が大きく変動することになります。
税金計算時には、期末の価格(例:CoinMarketCapなどで公表される国内主要取引所レート)を基準とするのが一般的です。


会計基準上の根拠:企業会計基準第38号

日本では、企業会計基準委員会(ASBJ)が公表した**企業会計基準第38号「暗号資産に関する会計処理」**に基づいて処理を行います。
この基準では以下のような取り扱いが定められています。

  • 暗号資産は現金預金や金銭債権ではなく、無形資産に類するもの
  • 期末における時価評価を原則とし、評価損益を損益計算書に計上
  • 第三者との取引がある暗号資産については、信頼性のある市場価格に基づく

つまり、有価証券のように時価評価する性格がありながら、現金とは異なる扱いを受ける点が特徴です。


財務諸表での表示方法と開示の注意点

会社が暗号資産を保有している場合、財務諸表上でも適切に開示する必要があります。

貸借対照表(BS)

資産の部に「暗号資産」または「無形固定資産」として記載します。
期末時価評価後の金額を表示するのが原則です。

損益計算書(PL)

期末評価による差額を「暗号資産評価損益」として営業外損益または特別損益に計上します。

注記情報(開示)

  • 暗号資産の保有目的・種類・数量
  • 時価の算定方法(どの取引所レートを採用したか)
  • 評価益・損の金額

これらを有価証券と同等のレベルで明示することが推奨されています。


価格変動リスクと内部統制の重要性

暗号資産はボラティリティ(価格変動)が大きく、決算直前でも大幅な価格変動が起きる可能性があります。
そのため、企業としては以下のようなリスク管理が必要です。

  • 期末評価日を明確に定義する(例:決算日の24時時点のレート)
  • 複数取引所のレートを比較して採用根拠を記録する
  • ウォレット管理者を明確化し、秘密鍵の管理体制を整備する
  • 会計監査人への説明資料(取引履歴・残高照会)を整備する

特に、監査を受ける中堅企業以上では、**内部統制の整備(アクセス権限・マニュアル整備・承認フロー)**が重要な要件となります。

実務での仕訳例と評価の流れ

ここでは、実際に会社が暗号資産を保有する場合の会計処理を、仕訳の流れで具体的に見ていきましょう。

1. 暗号資産を購入した場合

たとえば、会社が投資目的でビットコインを1BTC、取得時点で800万円で購入したとします。
手数料が0.5%(4万円)かかった場合、次のように仕訳します。

(借方)暗号資産 804万円 / (貸方)現金預金 804万円

手数料を取得原価に含めることで、期末評価の基準となる帳簿価額は804万円になります。


2. 決算時の時価評価

期末時点で、1BTCの時価が900万円まで上昇していた場合、評価益を計上します。

(借方)暗号資産 96万円 / (貸方)暗号資産評価益 96万円

逆に時価が700万円に下落していた場合は、評価損を計上します。

(借方)暗号資産評価損 104万円 / (貸方)暗号資産 104万円

このように、期末の時価との差額を必ず評価損益として処理するのが原則です。
評価益・損の金額は、期末の市場価格(一般的にはCoincheck・bitFlyerなど主要取引所のレート)を基準に算定します。


3. 売却・交換時の処理

暗号資産を売却したり、別の暗号資産に交換した場合は、帳簿価額と売却額の差額を損益に反映します。

例:900万円で売却した場合
(借方)現金預金 900万円 / (貸方)暗号資産 804万円
(貸方)暗号資産売却益 96万円

交換取引(BTC→ETHなど)の場合でも、時価ベースでの売買として損益を計上します。
したがって、「現金を介さない交換でも課税される」という点には注意が必要です。


評価レートの選定方法と注意点

期末評価で使用するレートは、信頼性のある市場価格をもとにする必要があります。
ただし、複数の取引所で価格が異なる場合があるため、次のような方針を定めておくとよいでしょう。

レート選定方法説明メリット注意点
① 主取引所レート採用会社が通常利用している取引所(例:bitFlyer)のレートを採用一貫性・説明性が高い特定市場に偏る可能性
② 平均レート採用国内主要取引所3社の平均値を採用価格変動の偏りを抑制計算手間がかかる
③ 公表指標利用CoinMarketCapなどの平均指標を利用国際的な整合性がある日本円換算に調整が必要

重要なのは、毎期一貫した基準で評価することです。
恣意的に取引所を変えると、監査や税務調査で疑義を持たれる可能性があります。


暗号資産保有に関する開示の実務対応

会社が暗号資産を保有している場合、決算書や附属明細書などの開示でも透明性が求められます。
特に次の3点は、監査法人や税務署から確認されやすいポイントです。

  1. 保有量・種類の明示
     ビットコイン・イーサリアムなどの保有数量と評価額を注記する。
  2. 評価方法の記載
     どの取引所・時点の価格を採用したか、算定根拠を示す。
  3. リスク情報の開示
     価格変動リスク、セキュリティリスク、会計処理の不確実性などを記載。

📘例:注記の書き方
「当社はビットコイン0.5BTCおよびイーサリアム3ETHを保有しており、期末時価は合計△△万円である。時価は国内主要取引所の公表価格を基準として算定した。」

このように、財務諸表に反映される金額の裏付けとなる説明を整備することが、信頼性を高めるポイントです。


税務実務での留意点:損益のタイミングと記録

税務上では、暗号資産の「評価益・評価損」は会計と同様に損益算入されますが、売却時・交換時の実現損益についても正確な記録が必要です。
具体的には次のようなデータ管理を行いましょう。

  • 取引履歴(日時・数量・価格・取引先)をエクセルまたはCSVで保存
  • レート換算根拠(円換算日・取引所名)を明示
  • 売却・交換時点での損益を自動計算できるツールの活用

また、税務調査では「ウォレット残高と帳簿残高の一致」「自己取引と会社取引の区分」が重点的にチェックされます。
特に役員個人が保有する暗号資産と会社保有分が混在している場合、貸付金・仮受金処理が発生しやすいため、早期に区分管理を行いましょう。


決算・監査に向けた実務フロー

暗号資産を保有する企業が、決算・監査対応をスムーズに行うためには、次のようなステップを確立することが有効です。

  1. ウォレット残高の確認
     取引所・コールドウォレットの残高を期末時点で確認し、スクリーンショット等で証拠保全。
  2. レートの確定
     期末日24時時点のレートを採用し、証拠(取引所スクリーンショットやAPIデータ)を添付。
  3. 評価損益の計上
     帳簿価額との差額を計算し、暗号資産評価損益を仕訳。
  4. 注記・明細の作成
     保有数量・評価方法・時価の明細表を作成し、財務諸表に添付。
  5. 監査人・税理士への報告
     処理方針と証拠資料を説明し、適正な処理であることを確認。

このプロセスを毎期繰り返すことで、監査対応もスムーズになり、社内の透明性も高まります。


暗号資産を保有する企業の実務課題と今後の展望

暗号資産の会計処理は、今後も会計基準や税務通達の改正により変化が見込まれます。
とくに以下の3点は今後の重要テーマです。

  1. ステーブルコイン・NFTなど新資産の扱い
     これらも暗号資産と同様に扱うか、別基準を設けるか議論が続いています。
  2. IFRSとの整合性
     国際会計基準では暗号資産を「無形資産」として扱うが、時価評価は任意。日本との乖離が生じています。
  3. 内部統制とリスク管理
     秘密鍵の管理や不正アクセス対策など、セキュリティ面の体制整備が不可欠です。

今後、企業がWeb3事業やブロックチェーン関連サービスに参入するにあたり、暗号資産の適正な会計・税務処理を理解することは経営リスク管理の要となります。


実務担当者が今すぐ取り組むべきステップ

暗号資産を扱う企業が混乱しないために、次の3ステップで体制を整えることをおすすめします。

  1. 社内ルールの明文化
     「どの取引所レートを使うか」「評価日をどう定義するか」を文書で規定。
  2. 記録・証拠の保存体制
     取引履歴・ウォレット残高・評価根拠を毎期保存。監査対応にも活用可能。
  3. 専門家への相談
     税理士・公認会計士など、暗号資産の会計実務に詳しい専門家に早期相談。

これらを整備することで、将来的な監査リスクや税務否認リスクを大幅に低減できます。


まとめ:正確な時価評価と透明な開示が信頼の鍵

暗号資産は、会社にとって新たな資産クラスであると同時に、会計・税務処理を誤ると大きなリスクを伴う対象です。
特に「時価評価の一貫性」「評価損益の計上」「注記の明確化」は、信頼性の高い財務報告に不可欠です。

今後、企業会計基準の改正や国際基準との整合化が進む中で、
早期に自社の会計方針・管理体制を整備しておくことが最善の防御策となります。

暗号資産を経営資源として活用する時代だからこそ、
「正しい会計処理」と「透明な開示」で、会社の信頼と価値を守りましょう。

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