DeFi取引の税務Q&A|スワップ・LP・ファーミングの課税と申告方法を徹底解説

DeFi取引の税務Q&Aをテーマにした日本語アイキャッチ画像。仮想通貨ウォレット、ビットコインコイン、税金書類、ルーペ、LP・スワップ・ファーミングのアイコンを配置した親しみやすいデザイン。
目次

分散型金融(DeFi)にも税金がかかる時代

DeFi(分散型金融)は、中央管理者を介さずに仮想通貨の取引や運用ができる新しい仕組みです。
代表的な取引には、以下のようなものがあります。

  • スワップ(Swap):仮想通貨同士の交換
  • LP(流動性提供):プールに通貨を預けて手数料報酬を得る
  • ファーミング(Yield Farming):報酬トークンを受け取る運用手法

これらは金融機関を通さないため匿名性が高く、便利な反面、税務処理が非常に複雑です。
「換金していないのに課税されるの?」「海外DeFiでも日本の税金がかかるの?」といった疑問を抱く人も多いでしょう。

この記事では、DeFi投資を行う個人投資家が知っておくべきスワップ・LP・ファーミングの課税関係を、
国税庁の見解や実務の整理をもとに、わかりやすくQ&A形式で解説します。


DeFiにおける課税が複雑な理由

1. 「いつ課税されるか」が曖昧

DeFi取引はブロックチェーン上で自動的に行われ、受取日・発生時期が明確でないケースがあります。
報酬トークンの発行やスワップの履歴も、取引所のような「取引明細」が存在しません。
そのため、「受け取った瞬間に課税されるのか」「売却時なのか」が判断しにくいのです。


2. 通貨の性質が多様化している

報酬として得られるトークンが複数の種類に分かれる場合(例:LPトークン・ガバナンストークンなど)、
それぞれに異なる経済的性質があり、課税区分の判定が困難です。

トークンの種類主な用途税務上の分類(一般的傾向)
LPトークン流動性提供の証明雑所得(資産の一部)
報酬トークン利回り報酬・ガバナンス投票雑所得(受取時課税)
ステーブルコイン価値の保存・決済通常の通貨と同様に扱う

3. 海外プロトコルが多く、税務資料がない

Uniswap、PancakeSwap、Curve、Aaveなどの多くは海外プロトコルです。
これらのプラットフォームは日本の税法上の「金融機関」に該当せず、
年間取引報告書の発行もないため、自己集計が必須となります。


DeFi取引の税務上の基本ルール

DeFiでも原則は「雑所得」

個人がDeFi取引で得た利益は、原則として雑所得として課税されます。
日本の税法では、仮想通貨(暗号資産)に関する収益はすべて「雑所得」に区分されます。

所得区分代表的な例DeFi取引の該当可否
事業所得継続的なトレード業務事業的規模なら可
雑所得副業・投資的取引一般的なDeFi投資はここに該当

雑所得の課税方式(総合課税)

雑所得は給与などと合算して課税される「総合課税」の対象です。
収入が高いほど税率が上がる累進課税制度が適用されます。

課税所得所得税率住民税率合計税率
195万円以下5%10%約15%
330万円以下10%10%約20%
695万円以下20%10%約30%
900万円以下23%10%約33%
1,800万円以下33%10%約43%

スワップ(Swap)の課税タイミング

スワップは「売却」とみなされる

DeFiで行うスワップ(通貨交換)は、**税法上「仮想通貨の譲渡(売却)」**に該当します。
つまり、単にAトークンをBトークンに交換しただけでも課税対象になります。

例:

  • Aトークン(取得価額1万円)をBトークンにスワップ
  • スワップ時のAトークン時価:3万円
    → 3万円−1万円=2万円の所得(雑所得)

この所得は、スワップした瞬間に確定します。


同種交換でも課税される

「円に換金していないから税金はかからない」と誤解する人も多いですが、
仮想通貨同士の交換でも日本の税法では「売却」とみなされます。

したがって、スワップのたびに課税対象が発生します。


スワップ報酬(トークン付与)も課税対象

Uniswapなどのスワップでは、流動性提供の報酬やスワップボーナスとしてトークンが付与される場合があります。
これも受け取った時点の時価で課税されます。

タイミング内容税務上の扱い
通貨交換A→Bへのスワップ売却(譲渡)扱い
ボーナス付与トークン受取雑所得(受取時課税)

LP(流動性提供)の税務処理

LPトークンの発行は「交換取引」とみなされる

流動性プールに資金を預けると、代わりに「LPトークン」を受け取ります。
このときも、元の仮想通貨を譲渡してLPトークンを取得したとみなされます。

例:
ETH+USDTを預けてLPトークンを取得
→ 預けたETH・USDTの時価 − 取得価額=譲渡益として課税

つまり、プールに預けただけでも課税が発生する点に注意が必要です。


LP報酬の課税タイミング

プールからの報酬(手数料分配・インセンティブ)は、受け取った時点の時価で課税されます。
受取時に自動でウォレットに追加されるトークン(例:CAKE、UNIなど)は、
その瞬間に所得として認識します。


LP解除時の課税も発生する

流動性を引き出す(LP解除)と、LPトークンを返却して元の仮想通貨を受け取ります。
このときも、**LPトークンの売却(譲渡)**とみなされ、課税対象です。

取引内容税務上の扱い課税タイミング
プールに預ける仮想通貨の譲渡預入時
報酬受取雑所得受取時
LP解除LPトークンの譲渡引出時

ファーミング(Yield Farming)の課税関係

報酬トークンは「受取時に課税」

ファーミングで得られる報酬(例:CAKE・UNI・SUSHIなど)は、受取時の時価で課税されます。
報酬トークンを売却していなくても、受け取った瞬間に雑所得が発生します。


売却時にも再度課税される

報酬トークンを売却した場合、受取時の時価との差額が再度課税対象になります。
つまり、ステーキングと同じく「二段階課税」の構造です。

タイミング内容計算方法所得区分
受取時トークン獲得受取時の時価×数量雑所得
売却時トークン換金売却額−受取時価雑所得

再投資しても課税対象になる

報酬トークンをそのまま再投資(複利運用)しても、受け取った時点で課税されます。
つまり、複利で回すほど課税回数が増える構造になります。

DeFi取引の確定申告のやり方

雑所得として申告する

DeFi取引による利益は、原則として雑所得に区分されます。
確定申告書Bの「雑所得(その他)」欄に以下のように記載します。

項目記入内容例
種目DeFi取引(スワップ・LP・ファーミング)
収入金額各取引の受取時価を円換算した合計
必要経費取引手数料、ツール利用料、通信費など
所得金額収入 − 経費

複数の取引所やウォレットを使用している場合は、合算して申告します。
海外DeFi(例:Uniswap・Aave・Curve)で得た収益も、日本居住者であれば課税対象です。


計算に必要なデータを整理する

DeFiの課税計算では、取引履歴の正確な管理が不可欠です。
取引所のように「年間取引報告書」が発行されないため、自分でデータをまとめる必要があります。

記録しておくべき項目

項目内容
取引日時スワップ・LP預入・報酬受取の日時
通貨名ETH、USDT、UNI、CAKEなど
数量各トランザクションの数量
受取時の時価円換算レート(CoinGecko等で取得)
手数料ガス代(ETH等)を含む

おすすめの計算ツール

複雑なDeFi取引を自動集計するには、損益計算ツールを使うのが現実的です。

ツール名特徴
CryptactDeFi対応、国内税制に準拠、CSV出力可
Gtax日本語対応、国内税務向けレート採用
CoinTracking海外取引所との連携が強い

これらのツールにウォレットアドレスを接続することで、スワップやLP報酬も自動計算できます。


よくあるミスと税務リスク

ミス①:スワップを課税対象外にしている

仮想通貨同士の交換はすべて「譲渡」とみなされ、課税対象です。
スワップ履歴を無視すると、過少申告に該当するおそれがあります。


ミス②:報酬トークンの再投資を非課税と誤解

ファーミング報酬を再投資した場合も、受取時点で課税されています。
報酬を受け取った事実(ウォレット残高の増加)がある限り、課税義務は発生します。


ミス③:DeFi特有のガス代(ETH手数料)を経費計上していない

DeFiの取引では、ガス代(トランザクション手数料)が発生します。
これを経費として計上することで、課税所得を減らすことができます。

経費区分内容例
取引手数料スワップ・LP預入・報酬請求時の手数料
通信費スマホ・PCのインターネット料金
情報収集費DeFi関連書籍・有料メディア購読
ソフト代損益計算ツールの利用料
ガス代Ethereumネットワークでの送金費用

ミス④:海外DeFiでの報酬を申告していない

海外プロトコルで得た報酬も、日本居住者であれば全額課税対象です。
ブロックチェーンのトランザクションは公開されており、税務署が追跡可能なため、
「海外だからバレない」は通用しません。


節税につながる3つの実践ポイント

① 課税を分散する

DeFi取引では「受取時課税+売却時課税」の二重課税構造になります。
報酬の受取タイミングを年をまたぐように調整することで、所得の分散が可能です。

例:

  • 12月末に報酬を受け取る → その年の所得に含まれる
  • 翌年1月に報酬を受け取る → 翌年の課税対象

課税の年度を意識的に分けるだけでも、税率を抑えられる場合があります。


② 損失通算を活用する

仮想通貨の売買で損失がある場合、DeFi報酬(雑所得)と通算できます。
ただし、通算できるのは同じ雑所得内に限られます。

区分損益通算後
DeFi報酬+50万円
BTC売買損−40万円
合計+10万円10万円分のみ課税対象

③ 長期的には青色申告も検討

仮想通貨を事業的に扱う人は、青色申告承認申請書を提出しておくと、
赤字を3年間繰り越せる「損失繰越控除」が使えます。
DeFi取引を継続的に行う中級者以上は、節税効果が大きい方法です。


DeFi特有の税務Q&A

Q1. DeFiで得た報酬が海外通貨建て(USDC・USDT)の場合も課税されますか?

はい。日本円換算した時点の時価で課税されます。
USDC・USDTなどのステーブルコインも「資産」とみなされます。


Q2. ファーミングで得た報酬をそのまま複利運用しています。申告は必要?

必要です。報酬を受け取った時点で課税されるため、
再投資しても「一度所得として確定」している扱いになります。


Q3. ガス代(ETH手数料)は経費に入れてよいですか?

はい。取引を行うために不可欠な支出として、必要経費に含められます。
ただし、どの取引に対応するガス代なのかを明示できるよう、
トランザクションID・スクリーンショットの保管が望ましいです。


Q4. DeFiトークンをエアドロップで受け取った場合は?

エアドロップは「報酬」として扱われ、受取時の時価で課税されます。
同様に、DeFiプロトコルの報酬トークンも受取時に所得として認識します。


Q5. 海外DeFiで得た報酬を円に換金していません。申告は不要ですか?

いいえ。円換金していなくても課税対象です。
「日本円に変えていない=非課税」ではなく、「受取時点で所得発生」とみなされます。


税務調査への備えとデータ保存のポイント

税務署は、国内外の取引所やブロックチェーンデータを照会して取引履歴を確認できます。
したがって、DeFi取引の履歴もブロックエクスプローラ等で追跡可能です。

データ保管のベストプラクティス

  • 各ウォレットのアドレス別に取引履歴を保存(CSV形式)
  • CoinGeckoなどで取得した円換算レートの根拠URLを保存
  • ガス代のトランザクションハッシュを記録
  • 税務上の根拠資料をクラウドやGoogleドライブにバックアップ

これらを揃えておけば、税務署から問い合わせがあってもスムーズに説明できます。


DeFi投資家が今すぐやるべき3ステップ

ステップ1:ウォレット履歴を整理する

MetaMaskやPhantomなどウォレットごとに履歴をエクスポートし、
取引内容(スワップ・LP・報酬受取)を分類します。


ステップ2:損益計算ツールで自動集計

GtaxやCryptactにウォレットアドレスを登録して、
自動で日本円換算した損益を出力します。


ステップ3:確定申告ソフトで入力

freee・マネーフォワード確定申告などに数値を転記し、
「雑所得(その他)」欄で申告。
経費を忘れず入力して節税効果を最大化しましょう。


まとめ|DeFi取引の税金を理解して安心運用を

DeFi取引は「スワップ」「LP」「ファーミング」など複雑な構造ですが、
税金の基本は受取時課税+売却時課税+雑所得申告の3点を押さえることです。

  • スワップ=仮想通貨の譲渡(課税)
  • LP提供=預入時・解除時に課税
  • ファーミング=受取時・売却時に課税
  • 海外DeFiも日本居住者は全て申告対象
  • ガス代や手数料は経費として控除可

正確な記録とツール活用で、複雑なDeFi課税もクリアにできます。
「記録の徹底」と「申告の一貫性」が、安心してDeFiを続けるための最強の武器です。

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